病院概要
当院のホームページにアクセスしていただき有り難うございます。令和7年度の始めに当たりご挨拶申し上げます。
2月26日に岩手県大船渡市で発生した山林火災は瞬く間に広がり、鎮圧に至るまで時間を要し、平成以降日本最大の山林火災となりました。鎮圧後も思うように復旧が進まず今なお深い爪痕を残しており、同じ県民として我が事として心が痛みます。1日も早い復旧を願って止みません。また、政治の方に目をむけますとトランプ大統領が再び返り咲き、様々な政策・問題発言により世界中が振り回されている中で、我が国は少数与党での石破内閣が前途多難な課題に揺れ動いておりますが、今後の動向に注視していきたいと思います。
さて、今年度から県立病院として第8次医療計画が開始されました。これは限られた有効資源で安定した経営基盤の確立を目的としているものです。当院では、少子高齢化の波で患者減少とさらに地域医療構想、並びに地域包括ケアシステムから病院機能の在り方、機能分担・連携強化により徐々に手術件数は減り、時代の流れを実感しておりました。このようなことで以前から行っていた地域包括ケア病床の立ち上げに加え、令和6年度から2病棟から1病棟体制へと病床削減に至りました。これによる院内での混乱が懸念されましたが、職員のご理解・ご協力で無事遂行出来ております。
今年は1947年(昭22)~49年(昭24)に生まれた「団塊の世代」が後期高齢者となる「2025年問題」が遂に本格化します。このことは高齢者の増加と生産年齢人口減少が加速する2040年ごろまでを視野に入れた「新たな地域医療構想」を考える上で重要な年代であるといっても過言ではありません。医療・介護の様々な問題が顕著化してくる中、“医療費など社会保障費の急増”を肌で感じながら、我々中小地域病院としては人口減少も相まってその方々を支える“医療、介護など福祉の人材不足とその高齢化”により益々供給が厳しくなってくるのではないかと危機感を感じております。このような状況下において今後暫くは増え続ける「高齢者救急」、「高齢者の通院問題」、「介護人材不足からくる入所者待機増」に対し在宅医療の強化は必須のものと考えております。
昨年の診療報酬・介護報酬の同時改訂では医療側、介護側お互いの理解を試される仕組みに誘導されました。多職種連携というものの、職域間の壁も連携を阻む要因になっていると思われますが、今や連携するのは当然のことで、これからはさらに一歩を踏み込み住民を巻き込んだ連携強化の必要性を感じます。これからの高齢社会、医療だけでは高齢者を支えることは出来ません。「病院に行けば安心だ」という“病院神話”はもはや通じる時代ではなく、国民1人ひとりが医療・福祉の正しい情報を取捨選択しなければならない段階にきているのではないかと思います。当然のことながら我々も正しい情報を提供しなければならないことは言うまでもありません。2040年に向けこれからは少子高齢多死時代です。いかにタイミング良く本人と家族の覚悟と決断を支えることが専門職の大きな役目となりましょう。
これからの厳しい時代の中で、我々地域密着型中小病院としての使命を果たすべく、今後とも当地域の医療・介護・福祉の発展に貢献出来るよう連携・協働し合い、職員一丸となって地域医療の充実・発展に取り組んで参りますので、皆様方のより一層のご協力とご指導、ご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
令和7年4月 岩手県立江刺病院長 川村 秀司